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宅建業者の説明義務

宅地建物取引業者との不動産売買等の仲介契約は、準委任契約と解するのが通説・判例である。これにより、不動産仲介業者は、民法644条により善管注意義務を負う。宅地建物取引業法35条の重要事項説明義務は、その具体的な一つの義務とされる。

重要事項とは、当該事実を告げないことによって取引の相手方などが重大な不利益を蒙る事実であり、法35条が列挙する事由に限られず、より範囲が広いものである。その地域の持つ特性や危険性を説明することは当然である。住人に心理的に影響が出るような問題がある場合は告知しなければならない。一般取引において当然説明するべき事項については、買主が明確に条件提示していないものであっても調査・説明する義務がある。

素人の知らないことをきちんと伝えて、安心な取引ができるようにするのが不動産業者の本来の仕事である。できるだけ多くの情報を伝えることが消費者の安心と信用を得ることになるのは言うまでもない。住んでから納得できない部分が出てきそうなところは、キチンと伝えることが当然である。「気持ちよく物件を引き渡し、納得して住んでもらいたい」。ここまで面倒見るのが営業というものである。

「聞かれなかったから」ではなく、聞かれなくても当然のこととして説明すべきである。もはや営業トークだけで不動産を販売する時代ではない。販売側は真の専門家として、購入者に聞かれたことに答えられるだけでなく、聞かれないことまで伝えられる姿勢が求められている。業者としては、事前にきちんと買主から希望をリサーチしておくべきである。後日のトラブルを防ぐためにも、買主の希望については積極的に聞き出しておくべきである。親兄弟が「物件を欲しい」と言った時と同じようにすべきである。

物件の調査義務・説明義務は、宅建業者としての通常の業務をしていれば当然に行うべきことである。騒音、周辺環境、日照などについては売買価格(賃貸価格)の設定の際に考慮するものであり、特別な作業をしなくても把握可能である。

情報の非対称性

仲介業者は物件を仲介するに当たり、物件に関するさまざまな情報を買主以上に知りうる立場にある。前主が家屋を手放した時の事情等も調べうるし、不動産に関する法律知識も豊富であるのだから、それについて対策を講じうる。消費者と事業者の情報の非対称性は大きく、消費者側の努力のみで、これを対称なものとすることは困難である。

一般人にとっては、不動産の購入と言うのは一生に一度くらいのもので、いくら一生懸命に勉強し、調査をしたとしても、百戦錬磨の不動産業者に比べると不利な面は否めない。情報量もマンパワーも体力もかけ離れている組織と個人で、まともに戦っても勝負にならない。高齢者や若者の被害が増えている状況にも考慮する必要がある。業者が巧妙になればなるほど、消費者は判断できず、専門家に騙されては打つ手がない。

従って、正確な物件情報の公開が不動産販売の前提となる。売る側、貸す側には住む側に正確な情報を伝える義務がある。問題がある物件には買い手・借り手がつきにくいが、それを隠して販売・仲介することは詐欺である。事業者に十分な説明義務を課し、その遵守に向けて的確で十分な措置を取らせ、万が一の義務違反にはペナルティをも課すことは正当である。さもなければ消費者があまりにも割を食いすぎる。

「消費者に対する説明義務・情報提供義務をつくそうとしない、おろそかにする事業者は、消費者契約締結についての姿勢に大きな問題がある」(村千鶴子、Q&Aケースでわかる市民のための消費者契約法、2001年、25頁)。その意味で、東急リバブル及び東急不動産の説明義務違反に関する一連のトラブルは看過できない。

もし業者が知っている情報を一方的に取捨選択して都合のよい事実のみを美辞麗句で飾り、都合の悪い事実は重要な情報ではないと一方的に判断して消費者に伝えないことが許されるならば、買主は常に欠陥物件を買わされる危険性がある。住居の問題は住む人にとっては日々の生活にかかわる深刻な問題であり、事実を知らされなかっとしたら打つ手はない。買主は購入後に初めて欠陥に気付き、残ったのは住む価値のない欠陥物件と借金だけということになりかねない。

買主

消費者が他人任せにせず、不動産についてよく調査し、悪徳不動産業者の物件を避けることは非常に重要なことである。東急リバブル不買運動も情報発信をすることで、微力ながら啓発に努めている。しかし東急リバブルや東急不動産のアルス東陽町301号室騙し売り事件で典型的に見られたように悪徳不動産業者は存在し、騙される消費者も少なくないのが現実である。一般消費者は不動産業者や仲介業者の優劣を判断する力や知識を、残念ながらそれほど持ってはいない。

「消費者が調べるべき」はトラブル時において悪徳不動産業者が好んで使用する台詞であるが、現実に騙された被害者を救済する上では有害無益である。病気を予防することは非常に重要であるが、病人に対して予防策を説いても苦しめるだけである。読者が名探偵に期待することは連続殺人の犯人を捕まえることであって、連続殺人を阻止することではない。

重要事項説明の説明事項の内容についての義務や、遺漏に対する責任があるのは説明する売主側にのみ発生し、買主側には発生しない。悪徳不動産業者は自己の責任を棚に上げて「買主がもっと調査すればよかった」「買主の過失である」と主張する。しかし、それはポイントがずれる。仲介業者が知っていた情報を説明しなかったことが問題であり、買主による調査の有無は無関係である。買主が調査していようといまいと業者には説明する義務がある。

物件を買う側としては知っていることは教えるべきと考えるものである。不利益事実を告げずに勧誘すれば、消費者が錯誤・誤信に陥るのは当然の成り行きである。悪い情報を知っていたにもかかわらず、あえて説明しなかったならば買主は余程お目出度い人でなければ「騙された」と感じ、怒るだろう。しかも仲介業者は誰でもなれるものではなく、行政から免許を交付された企業のみが行える。消費者は業者の免許に信頼して取引しており、信頼を裏切る背信的な行為が非難されるのは当然である。

告知説明義務違反で契約が解除されることはないと高をくくる悪徳不動産業者や、業者の不誠実さを棚に上げ、調査しなかった消費者が悪いと的外れの非難をするお抱え評論家がいる限り、いつまでたっても消費者は泣きを見ることになり、安心して不動産を購入することはできない。そもそも素人である消費者が売主の事情や物件を隅々まで調査して契約できるなら、仲介業者に手数料を払う必要はない。悪徳不動産業者は都合が悪くなると「消費者の自己責任」を強調するが、全て消費者の自己責任ならば不動産業者は不要である。

実際問題、家屋の購入に際しての個人買い主の情報収集は、住環境の中でも公共施設やショッピングセンター等の地理的要因の調査に留まるのが通常で、相隣関係にまで踏み込んだ調査は行いづらく時間もない。現地を数回見に行った程度では分からない、住んでみないと実感できないことが多い。

近所の人に「近所に問題のある人いますか?」と聞いて回る訳にもいかない。売主に「そんな人いません」と言われたらそれ以上調べるのも気が引ける。逆にプライバシーの侵害で訴えられるかもしれない。従って買主が調べなかったことは非難に値しない。

「事業者が、専門家として当然調査すべきことをしなかったために大切な情報を知らず、消費者に説明しなかったために消費者が誤認して契約を締結した場合には、売買契約に関する債務不履行がある、という民法上の責任を追及することは可能と考えられます」(村千鶴子、Q&Aケースでわかる市民のための消費者契約法、中央経済社、2001年、103頁)。

重要事項説明の悪用

重要事項説明は消費者保護を目的とし、売買契約の締結前に説明と書面の交付を義務づけたものである。「「事前には聞いていなかった」「説明と違った」という事態を防ぐためで、買い手が重大な不利益を被るような事実は重要事項に当たるとされる」(「ヒューザー、偽装把握の夜 姉歯氏からデータ入手」朝日新聞2006年1月16日)。

しかし残念なことに、法律の趣旨が業界の隅々まで浸透しているとはいえない。悪徳不動産業者は法の規制を形骸化させ、買主を保護するのではなく、問題物件を売りつけた自社の責任を回避するために悪用されている。詐欺行為が発覚した場合の逃げ道、業者の保身のための方便としか考えていない。

消費者としては重要事項説明書の内容をしっかりと理解しておくことが期待されている。しかし実際は本契約の場ではじめて出されるケースが多く、その場で理解して同意することが要求される。しかし、一般に重要事項説明は内容に誤りがないとしても、素人の消費者に理解できるように記述されていない。一般消費者にとっては普段接することのない難解な説明書を読むのに精一杯で、どこが重要なのか分からないことが多い。初めての契約の場で細かいことまで神経が回らない。緊張や興奮で見落とすことも少なくない。

東急不動産や東急リバブルでなくても悪徳不動産業者は、そこにつけ込み、悪質な販売手法を行っている。即ち「契約当日に、丸つけて、読み上げて、有無を言わせずハンコ押させて、ハイおしまい」で済ましてしまう。ヤバイことや問題になることは重要事項説明書の備考欄などに小さく書き、契約当日まで一切情報を出さない。消費者にとって大切な内容ほど小さい字で書き、難解な表現を用いる。

「契約は、重要事項の説明を納得した上で結びますが、一般的には説明を受け、その場で即契約というケースがほとんどです。単に書類にある事項を読み上げて、「はい、お仕舞い」という儀式的な行事になっています」(橋本一郎、サラリーマンでもできるマンション投資・家賃収入で儲ける極意、明日香出版社、2004年、174頁)。

契約の場では早口で簡単に読み上げ、後で問題となったら「ちゃんと説明しましたよ」と言い逃れの材料にする。重要事項説明書という書面が残っているため、消費者の勝訴は非常に困難である。「確信犯的なケースだと、差し出す前にぎっちり色々なことを説明して、買主を疲弊させてから説明に入る業者もいます」(三住友郎、家の価値を半減させるコワーい土地の話、宝島社、2004年、24頁)。実質的には脱法行為である。

宅地建物取引業法

「宅地建物取引業法は、その業を営むものに、免許を与えることにより関係法規の遵守をうながし、宅地建物取引業の健全化を図り、結果的に消費者を保護することを目的としてます」(「【読者の声】都市計画法、建築基準法、宅地建物取引業法の精神とは」司法ジャーナル2005年08月29日号)。

「宅建業法は、重要な事項は入居者に事前説明するよう業者に義務づけており、違反した場合は営業停止や免許取り消しなど行政処分の対象となる」(「東京都がヒューザー専務らを聴取 宅建業法違反の疑い」朝日新聞2005年12月15日)。

宅建業法47条では業務に関する禁止事項を定めており、違反した宅建業者には刑事罰も科せられる。故意に事実を説明しなかった場合は免許取り消し等の行政処分となる他、一年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科される。

(業務に関する禁止事項)
第四十七条
 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
二 不当に高額の報酬を要求する行為
三 手附について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為

第八十条
 第四十七条の規定に違反して同条第一号又は第二号に掲げる行為をした者は、一年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

裁判例

取引対象土地の近辺の眺望、建築計画を知っていながら、買主に告げない場合には注意義務違反の責任を問われる。これは調査義務ではなく、知っていたのに言わなかったという問題である。尚、住居に住めない(生活できない)と認められる事情や建物の歴史的経緯(以前の住人が家で自殺した等)がある場合は瑕疵担保責任が認められる。

「マンションの場合には、室内での自殺などのできごとがあったことは、住まいとしてのマンションの品質にかかわるものである」(村千鶴子、Q&Aケースでわかる市民のための消費者契約法、中央経済社、2001年、73頁)。

名古屋地裁昭和59年2月10日「宅建業者が、土地の売買の仲介をするにあたり、買主がゴルフ場用地とする目的で取得することを知りながら、同地に特別高圧送電のための鉄塔の建設の予定があることを買主に告知しないのは、仲介業務上の注意義務を怠ったものである」

松山地裁平成10年5月11日「土地の売主である宅建業者が南側隣接地に高架道路を建設する計画があることを知りながら買主にその事実を説明しなかったことは、重大な契約上の義務違反であるとして、土地及び建物の減価額と精神的損害につき、損害賠償請求が認容された」

東京地判平成11年2月25日判例時報1676号71頁「マンションの南側隣接地に建物を建築する計画は、マンション購入の意思決定に重要な意義を持つ事項であり、マンションを分譲販売する宅建業者は、売買契約に付随する義務として、右計画を購入者に告知すべき義務を負う」

二条城事件

青田売りのマンションで、眺望についての説明義務違反による契約解除が認められた事例である。新聞でも報道された(「青田売りマンション説明義務「実物見たのと同程度に」」朝日新聞2000年10月30日)。原告は京都でマンション(京都市中京区、七階建て)を購入した大学教員である。

原告は1994年10月にモデルルームを訪れ、マンションからの眺望に惹かれ、六階部分の一室(3LDK、約64平米)を契約した。価格は4560万円で、手付金460万円を支払った。

配布されたパンフレットには「二条城の見える住戸が六戸ある」と記載されており、当該居室はそれに含まれていた。また、原告は「隣に五階建ての建物があるが、六階の居室を購入すれば、視界を遮るものはなく二条城を見ることができるか」と確認していた。これに対し、販売担当者は「窓から二条城が見える」と回答した。

しかし、完成後の95年7月に開かれた内覧会で、窓の正面に、隣接する五階建てビルの冷却塔(クーリングタワー)があるため、二条城はほとんど見えず、騒音も大きいことに気付いた。その日のうちに契約解除を求めたが、不動産会社側は契約違反を主張し、手付金の返還を拒否した。

原告は二条城への眺望を得られるものとして契約したのだから、契約の目的が達せられないとして、契約違反に基づく売買契約の解除、それに伴う手付金の返還並びに、損害賠償を求めて京都地裁に提訴した。一審判決は眺望に関する説明の不正確さを認定したが、原告の請求は棄却した。原告はこれを不服として控訴した。

高裁判決(大阪高判平成11年9月17日判例タイムズ1051号286頁、判例タイムズ1068号96頁、井関正裕裁判長)は、完成前のマンションの売買においては「購入希望者は現物を見ることができないから、売主はその実物を見聞できたのと同程度にまで説明する義務がある」と説明義務の判断基準を示した。売主の説明がその後に完成したマンションの状況と一致せず、その条件であるならば買主は契約を締結しなかったと認められる場合には「買い主は売買契約を解除することができる」とする。

眺望権に対する主張についても、「マンションの売買において、眺望は重視される要素。契約においては目的の物が主観的な好みや必要に応じているかどうかは極めて重要」と認めた。売主には「窓等からの視界を遮るものがあるか、ないかについて調査、確認して正確な情報を提供する義務があった」とした。そして説明義務違反として、手付金等の変換及び精神的苦痛に対する慰謝料30万円の支払を命じた。被告は最高裁に上告受理申立てをしたが、却下された(2000年9月26日)。これにより原告勝訴が確定した。

「営業マンは、買い主が二条城への眺望を重視して、本件居室を購入する動機としていることを認識していたわけですから、「青田売り」販売する者として、バルコニーや窓からの視界を遮るものがあるかどうかを調査確認して、正確な情報を提供する義務があったといわざるを得ません」(平賀功一「営業マンの説明が不十分だった(?) 未完成マンション契約時の盲点」All About 2005年9月25日)。

住友不動産事件

分譲マンション「大通シティハウス」(札幌市中央区南1東3)の高層階物件を購入した住民ら三人が、同じ会社の別のマンション「シティハウス大通東」で眺望権が侵害されたとし、住友不動産と住友不動産販売に計約2000万円の損害賠償を求めた事案である。原告は「新マンションの建築の情報を知らずに購入した。被告側は計画を隠していた」「購入したマンションを建築・分譲した業者が、眺望を侵害する別のマンションを建てたのは信義に反する」と主張した。

札幌地裁は住友不動産に計225万円の賠償を命じた(平成12年3月31日判決、川口泰司裁判官)。「新マンション建築により視界の一部がさえぎられた。高層階の購入動機は眺望に重きを置いている」「住友不動産は建築した者として、眺望を害しないよう配慮する義務がある。眺望権が損なわれたとする原告の怒りも容易に想像できる」と指摘する。

住民らは住友不動産販売からセールスポイントとして「眺望の良さ」を強調され、15階建てマンションの13、14階の物件を2001年11月までに購入契約を締結した。販売時には「ベランダから花火が見える」とも説明された。原告の一人、斉藤正也氏は、当初、四階を申し込んだが、営業担当者から「眺望がすばらしい」と勧誘され、435万円高い13階の部屋を購入した(「眺望PRしておいて…南側にマンション建設 住友不動産に賠償命令」読売新聞2004年4月1日)。入居当初、景色を遮るものはなく、山並みも見渡せた。

しかし、一年半後にはその眺望は一変した。2002年6月頃、住友不動産と住友不動産販売はマンションの約57メートル南に15階建てマンションを分譲販売する計画を表明し、2003年12月に完成した(「225万円の賠償命じる/眺望権の侵害認める」北海道日刊スポーツ2004年3月31日、「札幌のマンション、眺望権で賠償命令」日本経済新聞夕刊2004年3月31日)。

原告らは反対の会を作り、住友不動産に対して計画の変更などを申し入れたが全く受け入れられなかった。新マンション建築で、居間からの視界中に新マンションが入るようになってしまった。原告の一人、斉藤氏は「見晴らし良いということで入居したのに、同じ会社がそれを否定した。絶対許せない」と語る。

判決について、斉藤氏は「主張が認められた点は評価したいが、金額には不満が残る。被告は住民に対し、謝罪すべきだ」と語る(「眺望遮るマンション 「信義違反」と賠償命令」朝日新聞2004年4月1日)。原告代理人の高橋智弁護士は「マンションを買うときは現物が無く販売業者の信用があるから大金で予約する。企業のあり方が問われた」と語る(「眺望で売ったのに眺望破壊」しんぶん赤旗2004年4月1日)。

シックハウスでマンション売買契約解除

購入したマンションがシックハウスになっているため居住できないとして、購入者の夫婦が販売会社のベル・アンド・ウイング(東京都港区)を相手取り、購入代金など計約5631万円の支払いを求めた訴訟の判決が東京地裁(杉浦正樹裁判官)であった(2005年12月5日)。

裁判所は、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドの濃度が竣工直後に厚生労働省の指針値を相当超えていた可能性があるとして、販売会社に購入代金など約4791万円の返還を命じた。原告側代理人の米川長平弁護士は、シックハウスを理由としてマンションの売買契約解除を認めた判決は初めてと話す(「シックハウスでマンション売買契約解除の初判決」建設総合サイトKEN-Platz 2005年12月8日)。

夫婦は2002年7月27日、東京都台東区の新築マンションを4350万円で購入する売買契約を、販売会社と結んだ。夫婦は2003年5月29日に引き渡しを受け、7月15日に家具を搬入した。、しかし頭痛などがして住むことができなかった。1カ月あまりで新居を退去した。妻には目がちかちかするなどの症状が出て、シックハウス症候群と診断された。

夫婦の依頼で台東保健所が7月25日、簡易測定器を使って室内空気環境を測定した。その結果、玄関側洋室でホルムアルデヒドの濃度が0.43ppmになるなど、厚労省指針値の0.08ppm(=100μg/m3)を超えていた。夫婦は8月22日に建物を空室にして、同月26日付で契約解除の意思表示を販売会社に通告した。

マンション販売時の新聞折り込みチラシとパンフレットには、「ホルムアルデヒドの放散量が少ない建材を使っている」と記載されていた(武本光政「<シックハウス>マンションの売買代金返還命令 東京地裁」毎日新聞2005年12月5日)。夫婦はこのチラシなどを検討の上、マンションを購入した。夫婦は、実際の建物ではホルムアルデヒドが放散しておりシックハウス対策が不十分と主張。健康を害し、居住に適さないから瑕疵があると訴えた。裁判所鑑定人は入居から1年後の室内濃度を実測し、「入居時は指針値より相当高かったと考えられる」とする報告書を提出した。

判決は「引き渡し時に、シックハウスの原因となるホルムアルデヒド濃度が厚生省(当時)指針値を相当程度超える水準にあった」と認定した(「シックハウスで賠償命令 契約解除認め4800万円」共同通信2005年12月5日)。「ホルムアルデヒド(シックハウスの原因物質)の濃度が、国の指針値を相当程度超えていたと見られ、建物の品質に欠陥がある」(「シックハウスで住めず、売り主に4700万賠償命令」読売新聞2005年12月5日)。

売り主の瑕疵担保責任に基づき、購入費用4350万円のほか、キッチンなどの追加費用約176万円、諸費用約73万円、ローン諸費用約92万円、支払い済みの管理費と修繕積立金約16万円、移転費用約8万円、ローン利息約74万円を含め、計約4791万円の損害賠償を認めた。

本判決ではホルムアルデヒド濃度の実測値からシックハウス対応をうたった売買契約自体の瑕疵を認めた点が特徴である。原告側の健康被害そのものは大きな問題としていない。たとえ現在のシックハウス規制に従って建築したとしても、実測値が指針値を上回れば、被害者に対する賠償責任を負わなければならない。「法律を守っているから」という抗弁は最早通用しない(「住宅事件簿」日経ホームビルダー2006年4月号)。

眺望阻害を理由とする新築マンションの無条件解約

新築マンションの南側に超高層のオフィスビルが建築されることを理由に、事業主と販売会社が契約の無条件解約に応じることを決めた。裁判などを介さず自主的にマンション事業者が無条件で解約に応じた例は少ない。時代の流れが業者の利益偏重から消費者重視に映りつつあることを示している。

解約の対象となったマンションは「プラネ・ルネ スプリングスタワー大阪」(大阪市中央区)。高さ約120m、35階建てのマンションで、2006年2月から住民が入居する予定であった。事業主は新星和不動産(大阪市)と総合地所(東京都港区)で、販売会社は住友不動産販売(東京都新宿区)である。

パンフレットでは「ときめきと感動が高まる、天空のアドレス」と、眺望の魅力をアピールしていた。2004年2月に販売を始め、2005年3月までに分譲価格1800万〜9900万円台の全269戸を契約、完売した。

2005年10月になってスプリングスタワー大阪の真南約30mに高さ91m、地上20階建ての高層ビル計画が持ち上がった。複写機メーカーの京セラミタ(大阪市)が、敷地内の駐車場に技術研究所の建設を決めた。京セラミタは星和不動産を通じて住民に連絡した。着工は2006年4月で、完成予定は2008年2月である。ビル北面に窓を設けず入居者のプライバシーに配慮するものの、マンション35階のうち28階部分までが、わずか約30mの距離にあるビルの壁で眺望を遮られることになる。大阪平野を見下ろす絶好の眺望を楽しめる筈が一転してビルの壁に遮られることになる。

京セラミタによると、2003年春にマンション計画を知った段階で、事業者側に「将来新社屋を建てるかもしれないし、建てないかもしれないが、購入希望者に伝えてほしい」と申し入れた(「眺望「台無し」 新築の超高層住宅、真南にビル計画」朝日新聞2006年1月20日)。しかし事業者は重要事項説明書に「南側が将来的に開発行為・建物建築の可能性があります」と記載するだけで、京セラミタの依頼内容を購入者に伝えなかった。

購入者の一部が、新星和不動産らに無条件の解約や分譲価格の値引きを求めていた。契約者は「契約直前の重要事項にあいまいな表現でビル建設の可能性を記しただけで、説明不足だ」「想定していた住環境が変わったのだから、値引きなど契約条件の変更に応じるべきだ」と主張する。大阪府守口市内の契約者の無職男性は「契約時にビルが建つのを知っていたら買わなかった」と憤る。

事業者側の説明会(2006年1月17日)には約170人が集まり、手付金などの返還を条件にした解約や購入費の値引きを求めた。「販売は適正に行われた」と譲歩の構えを見せない事業者側に「誠意を見せろ」と怒号が飛ぶ中、とりあえず代金の支払期限を当初の2月2日から約二週間延ばし、今後も話し合いを続けることになった。

2006年1月22日、三社は購入者に対して1月末までに解約すれば、購入費用を返金すると申し出た。事業者側の説明会で、事業者側は契約者に「ご回答」と題した文書を配布した。「私どもがご返事できるギリギリのご回答」として、1月末までに解約する契約者に対し、全額返金の方針を伝えた。返金額には購入者の要望に基づく設計変更に要した費用や手付金、契約に伴う印紙代も含む。

無条件解約を提案した理由について、新星和不動産のマンション事業部は、「早期に解決するために、法令を踏み越えて判断した」とする(「眺望阻害を理由に新築マンションの無条件解約に応じる」建設総合サイトKEN-Platz 2006年1月26日)。「早期解決の観点から最大の誠意を示した」(「新築マンション南にビル計画 無条件解約を業者が容認」朝日新聞2006年1月23日)。

「プラネ・ルネ スプリングスタワー大阪」の事業者は、隣地所有者である京セラミタの依頼内容(将来新社屋を建てるかもしれないし、建てないかもしれないが、購入希望者に伝えてほしい)を購入検討者に説明しなかった。購入者が騙されたと激怒するのは当然である。事業者が無条件解約に応じたのも消費者重視の流れからは自然である。世の中の動きに鈍感な企業は早かれ遅かれ廃れることになる。

ローレルコート難波住民、近鉄不動産を義務違反で提訴

「生駒山を望む」と、眺望の良さをPRして大阪・JR難波駅前の超高層マンション「ローレルコート難波」(28階建て)を分譲した近鉄不動産が、4年後の2005年秋、約80メートル東に11階分高い別のマンション「ローレルタワー難波」(39階建て)を建てた。

「眺望の変化については事前に承諾をいただいている」と同社側は主張するが、視界を遮られて生駒山を楽しめなくなったとして、住民5人が近く、慰謝料など各750万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こす。都心部で超高層の集合住宅建築が相次ぐなか、「兄弟マンション」を巡る眺望論争が注目を集めそうだ。

訴状によると、住民は2001年6−10月、近鉄不動産が分譲したローレルコート難波の21-26階に入居。パンフレットには「生駒山を間近に望む眺望」「早起きしたくなる朝の眺めが自慢です」と記載されていた。「大阪シティエアターミナルビル」を挟む東側の土地は開発前だったが、系列の販売会社側から「低層商業施設が建つ。眺望は遮られない」と言われたという。

ところが、近鉄不動産側は2003年6月、ローレルコート難波管理組合にローレルタワー難波建設計画を発表。一部住民が抗議したが、「パンフレットには良い情報しか載せないもの。適法な建築物なので問題ない」と開き直った。ローレルコート難波の重要事項説明書では、購入者の承諾事項として「中高層建築物が建設され、眺望や日照条件などが変化する場合がある」とされていた。

ローレルタワー難波は2005年10月に完成。原告側は「眺望が重要な購入動機だったのに、生駒山から昇る朝日が見えなくなった」と訴える。「近鉄不動産は、売り主として眺望やプライバシーに配慮する義務があるのにローレルタワー難波を建築販売し、その義務に反した」と主張する(「山望むマンション前、同じ業者が超高層…法廷争いに」読売新聞2006年4月13日)。

ローレルコート難波住民は近鉄不動産から、眺望という価値のある住戸、付加価値分高額で部屋を購入した。しかし近鉄不動産は前に販売したのと同じ眺望という商品を、前の客を犠牲にして、僅か数年後に別の客に販売した。ローレルコート難波住民が怒るのは当然である。不動産業者が眺望に値を付け一旦高額の利益を得ながら、更に別の客から利益を得るのは利益の二重取りである。

不動産関係訴訟

積水ハウス、アパート経営で説明義務違反

積水ハウスは最高裁判決で説明義務違反を認定された(2006年6月12日)。違法建築になる自宅改修計画を持ちかけられ、借入金が返済不能になったとして、京都市の自営業男性が、プランを作成した積水ハウス(大阪市)と融資した「みずほ銀行」(旧第一勧業銀行)に約3億3000万円の損害賠償を求めた訴訟である(「最高裁「積水ハウス、説明義務怠る」・高裁に差し戻し」日本経済新聞2006年6月13日)。

最高裁第一小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は積水ハウスの賠償責任を認定。「積水ハウスの担当者は、容積率の制限を超える違法建築のマンションになるプランと認識していたのに説明しなかった」「積水ハウスは説明義務を怠った」「提案は返済資金をつくるため土地の一部売却を見込んでいたが、これを実行するとマンションが違法建築になることを、積水ハウスは説明する義務があったのに怠った」。

判決は、みずほ銀行の賠償責任にも言及する。「特段の事情がある場合には、銀行側の責任も認める余地がある」。銀行側にも賠償責任がある可能性があるのに、二審は審理を尽くさなかった。従って、みずほ銀の責任の有無も含めて審理をやり直す必要がある。男性の請求を棄却した二審判決を破棄し、大阪高裁に差し戻した。

原告は西陣織職人で、義父は夏の全国高校野球選手権大会の優勝旗を製作した著名な職人である。判決によると、積水ハウスは男性の京都市上京区内の自宅を取り壊して敷地に5階建てマンションを新築し、敷地の3分の1の売却代金と賃料を返済に充てるプランを提示した。

建築は積水ハウスが請け負い、第一勧銀が約4億6400万円を融資した(1990年)。しかし、敷地の一部を売却すると、5階建ては容積率の制限で違法建築になると説明していなかったため、原告は売却できず返済不能となった。土地・建物を差し押さえられ、競売にかけられた。

原告は、勧めたのが積水ハウスという大企業であり、また日本を代表する銀行が融資するのだから、まさかそれが違法建築になるとは思わなかったのであろう。しかし従来は大企業を勝手に信用した方が悪いというこ主張がまかり通っていた。消費者を破産に追い込み、「ザマーミロ」と舌を出すのが悪徳不動産業者である。その意味で、説明義務違反を認めた最高裁判決は、画期的判例である。

高級マンション値下げ販売で住民提訴

名古屋市千種区の高級マンション「ライオンズセレブ富士見台」の住民ら12戸18人がマンション分譲最大手の大京(本社・東京)等に計約2億3300万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。「『セレブ』の名にふさわしい人に売る」「将来も値引きしない」と勧誘されて購入したのに、1年余りで値下げ販売されて資産価値が失われたとする。2006年8月4日に第1回口頭弁論が開かれる。

訴状によると、このマンション(84戸)は、名古屋市内の高額納税者番付で常連だった資産家の自宅敷地の一部(約1万平方メートル)を大京が購入して04年3月に完成。原告の住民らは約4800万〜9100万円で購入し、同年6月までに引き渡しを受けた。

その際、担当者から「社会的地位の高い『セレブ』という名称にふさわしい人を特に選んで販売する」などと勧誘されたほか、「値引きはしない」「最後までこの値段で売る」と言われ、1戸以外は値引きもなかったという。

しかし、大京は2004年9月に産業再生機構から支援決定を受け、マンションの処分などを目的に新設された特定目的会社へ未入居の37戸を売却。同社は2005年6月に平均約2割(1戸当たり約1000万〜1700万円)、2006年2-4月には平均約3割(同1700万〜2200万円)を値引きして再販売した。

原告側は、大京が販売を始めた2003年秋の時点で、不動産の処分や資産価値の下落は予想できたと主張。大京と特定目的会社に対し、値引き額に相当する損害を被ったとして賠償を求めている(「「セレブ」なのに、1年余で値下げ 住民ら大京など提訴」朝日新聞2006年8月2日)。

マンション値下げ販売で損害賠償

最高裁判所は兵庫県住宅供給公社の分譲マンション「マリナージュ芦屋」の値下げ販売をめぐる同公社の上告を棄却した。これにより、値下げ前の住宅購入者に対する損害賠償を命じた4月13日付の大阪高等裁判所の判決が確定した。

同公社は2002年、1999年に完成したマリナージュ芦屋の売れ残り住戸を、平均坪単価を約165万円から83万円に下げて販売した。大阪高裁は、値下げ後の価格を市場価格の下限より10%以上安い不適正な価格と認定した。公社に対し値下げ前の購入者への賠償を命令した。金額は一戸当たり100万円だった(「マンション値下げ販売は不当、上告棄却で兵庫県住宅供給公社の敗訴確定」ケンプラッツ2007/11/06)。

東急不動産(販売代理:東急リバブル)も分譲マンションを一部の購入者に値下げ販売している。アルス東陽町301号室の価格は3060万円であったが、190万円値引きされ、2870万円で販売された(林田力「新築マンション値引き事例」JANJAN 2007年3月25日)。

値引きされた2003年6月下旬は、アルスの販売最終期が同年4月26日に終了して先着順で販売されてから2ヶ月経過後で301号室は売れ残り物件と言える。このアルス東陽町301号室は引渡し後に騙し売り(隣地建て替えを説明しなかった)が発覚し、消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)に基づき売買契約が取り消された。

雨漏り被害でマンション住民、大豊建設を提訴

徳島市内にある分譲マンション「コスモグランディ大松」の住民は、設計と施工を担当した大豊建設(東京都中央区)に補修費や慰謝料など合わせて約1億8800万円の支払いを求める訴訟を徳島地裁に起こした。同マンションはSRC造の12階建てで、95年12月に完成。戸数は74戸で、そのうち55戸の住民が、床や廊下などに数多くの亀裂が入り、雨漏りの被害を受けているとする。

訴状によると、55戸の住居では、和室や洋室、バルコニーの床や天井に多数の亀裂が生じ、大半の住居で漏水が生じていた。例えば、20戸の和室で畳を持ち上げて床版を確認したところ、16戸で亀裂が発生していた。大半のひび割れの幅は0.3mmを超えており、幅1mmのひび割れもあった。バルコニー側の壁や柱、梁でも多数の亀裂が確認できた。住民らはこれらのひび割れの原因として、「コンクリート打設時の養生期間が不十分だった影響が大きい」と主張している。

共用廊下の壁や柱、梁にも多数の亀裂が生じていた。2階から12階の共用廊下の壁だけで123本の亀裂が生じており、12階には39本の亀裂が集中していた。さらに、共用廊下の床と天井スラブでは200本を超える亀裂と白華(エフロレッセンス)が見つかった。白華とは、コンクリート内部の水酸化カルシウムが水によってコンクリート表面に浸み出して結晶化する現象。

共用廊下の床に生じていた亀裂で水溜試験を実施したところ、ひび割れは下の階まで貫通していたことが判明した。10階の共用廊下に面して設置されているパイプスペース内では、多数のジャンカも認められた。ジャンカはコンクリート構造物において、粗骨材が多く集まってできた、空隙の多い不良部分を指す。発生原因としては材料分離、締め固め不足、型枠からのセメントペースト漏れがなどがあげられる。断面性能の低下、コンクリートの中性化、鋼材の腐食の促進などの影響を及ぼす。

屋上のアスファルト防水層の継ぎ目にも亀裂が生じており、最上階の12階の住居では、和室とリビングの天井から漏水していた。「台風などの際にバルコニー側のサッシのレール部分から雨水があふれ出し、室内に浸透した雨水が床の亀裂を伝わって下階への漏水を招いた」と主張する。

住民らは耐震性能についての欠陥も指摘した。同マンションでは、構造図通りに構造スリットが施工されていなかった。構造スリットとは、地震時に柱のせん断破壊を防ぐために、柱と壁の縁を切る部材。このほか、南西方向の地盤が沈下して建物と地上に設置している脚踏み台との縁が切れている欠陥も見つかった。

浅野祐一「雨漏りなどの被害に対する補償を求めて大豊建設を提訴」ケンプラッツ2006年4月12日
加藤明子「雨漏り被害:マンション住民、東京の建設会社を提訴 1億8000万円払え /徳島」毎日新聞2006年4月4日

テナントビル電気代過払い、家主に480万円返還命令

大阪・ミナミのテナントビルに入居する飲食店主らが「家主が実費の2倍前後の電気代を徴収するのは不当」として、家主に過払い分の返還を求めた訴訟で、大阪地裁は店主らの主張を認め、計約480万円の返還を命じる判決を言い渡した(2006年11月7日)。

原告側弁護士によると、同様の“不正請求”は繁華街でみられ、店主が「ミナミ相場だから」と諦めるケースもあるという。弁護士らは24日、「店子(たなこ)を紹介する仲介業者が家主にこうした請求を勧めていた」として大阪府に是正指導を申し入れた(2006年11月24日)。

原告は、大阪市中央区東心斎橋のテナントビル(8階建て)に入居している店主5人。家主がビル全体で電気料金を一括払いした後、5人から実費の2・4〜1・8倍を徴収していたとして、2003年12月から04年12月にかけて順次提訴したが、家主側は「電気設備の維持管理費などを上乗せしただけ」と反論していた。

判決は「維持管理費などを考慮しても実費の1・3倍を超えた分は不当利益にあたる」と認定。5人が提訴までの3〜9年間に支払った計約1300万円のうち、約480万円を返すよう家主に命じた。家主側は控訴した。

店主の1人は「10坪ほどの店で1日5時間程度の営業なのに、月10万円近い電気代を請求されたこともあった。裁判所が公正な判断をしてくれた」と喜ぶ。代理人の河原林昌樹弁護士は「店子の足もとをみた行為で宅建業法に抵触する。被害を掘り起こし、仲介業者を告訴することも検討したい」としている。

一方、大阪市の繁華街などで広くビル賃貸借などを手がけているこの仲介業者は「家主に請求のノウハウを伝えたのは確かだが、光熱費設定について特に指針はなく、実費の2倍までは家主の自由裁量という認識だった」と開き直った(「テナントビル電気代過払い、家主に480万円返還命令」読売新聞2006年11月25日)。

花火観賞妨げ、ゴールドクレストに慰謝料命令

東京・隅田川で毎夏開催される隅田川花火大会を楽しめるマンションの部屋を購入したのに、同じ分譲会社「ゴールドクレスト」(千代田区)が別のマンションを建て、花火が見られなくなったとして、東京都内に住む夫婦が同社に約350万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(水野邦夫裁判官)は慰謝料66万円の支払いを命じた(2006年12月8日)。

判決によると、夫婦は2003年5月、隅田川の花火大会を見ることが出来る台東区内のマンション「クレストフォルム浅草グランステージ」の一室を同社から購入、同年10月に引き渡しを受けた。マンションのパンフレットには花火の写真が掲載されていた。ところが、同社が夏が来る前の04年5月、道路を挟んだ向かい側に別のマンション「クレストフォルム浅草ブライトコート」(階数は同じ)を建築し始めたため、花火が見えなくなってしまった。原告側は「花火の鑑賞を期待して購入した。その期待を分譲会社も知っていたはずだ」(竹下慎一弁護士)と主張した。

水野邦夫裁判官は、分譲会社は夫婦が購入時に花火が見える点を重視していたのを知っていたと指摘。「会社は信義則上、花火が部屋から見えるのを妨げないようにする義務を負っていた」との判断を示した。「夫妻は取引先の接待用に改造工事までしたのに、1年もたたずに眺望を妨げられ精神的苦痛を受けた」。同社が眺望を妨げる別のマンションを建築したのは信義則違反に当たり、「夫婦の精神的苦痛は相当なものだった」として、慰謝料を認めた。

「Yにおいては、本件マンションの北東向きの部屋を購入したものの多くが隅田川花火大会の花火の観望という価値を重視してこれを購入したという事実を知り、あるいは知り得る状況にあったにもかかわらず、……これに対する十分な配慮をした形跡はうかがえず、わずか1年も経ずにその観望を妨げるマンションの工事に自ら着手しているのであり、その後……十分に誠意を尽くした対応をしたとまではいえないと認められる」。

「花火観賞妨げ、マンション業者に慰謝料命令」読売新聞2006年12月8日
「花火見えず、慰謝料66万円=マンション分譲会社に賠償命令−東京地裁」時事通信2006年12月8日
高倉友彰「<隅田川花火訴訟>観賞妨げた分譲会社に賠償命令 東京地裁」毎日新聞2006年12月8日
「花火の期待裏切ったマンション会社に顧客への慰謝料支払い命じる」ケンプラッツ2006年12月25日
鎌野邦樹「眺望・景観利益の保護と調整―花火観望侵害・損害賠償請求事件(東京地判平成18・12・8)を契機として」NBL 2007年3月15日号
長谷工による吉祥寺東町高層マンション建設計画について | マンションデベロッパーのモラル
http://higashichomanshon.blog86.fc2.com/blog-entry-36.html

最高裁が欠陥マンション設計・施工者の賠償責任を認定

最高裁判所は2007年7月6日、基本的な安全性を欠く建物の設計者や施工者は、直接の契約関係がなかった建物購入者に対して賠償責任を負うとする判決を下した。購入者への賠償責任を認めなかった福岡高等裁判所の二審判決を破棄し、同高裁に事件を差し戻した。

問題の建物は大分県内にある鉄筋コンクリート造の店舗付き賃貸マンション。9階建てのA棟と3階建てのB棟からなり、A棟では1階が駐車場、2〜9階が住戸、B棟では1階が店舗、2階が事務所、3階が住戸だ。住報一級建築士事務所(東京・渋谷)が設計と工事監理、菅組(大分県豊後高田市)が施工を担当し、1990年に完成した。建築工事費は約3億7000万円。購入者は建築主から完成した建物を約5億6000万円(建物約4億1000万円、土地約1億5000万円)で購入した。

建物のバルコニーや居室の床と壁などにひび割れが生じており、鉄筋の露出などの瑕疵も見つかった。購入者側は、バルコニーの手すりのぐらつきなども指摘している。建物の購入者は、設計者と施工者を相手取り、損害賠償を請求する訴訟を1996年に起こした。請求額は約6億4000万円(うち瑕疵補修工事代金は約2億7000万円)だ。

1審の大分地方裁判所は設計者と施工者に約7400万円の賠償を命じたが、2審の福岡高等裁判所は購入者の賠償請求を退けた。購入者は契約上、設計者と施工者に瑕疵担保責任を追及できる立場にないことや、建物の瑕疵が構造耐力上の安全性を脅かすほどのものではないことが、同高裁の判断の理由だった。

最高裁は、建物の設計者と施工者が、建築主だけでなく利用者、訪問者や近隣の通行人にとっても安全な建物になるよう注意する義務があると認定した。この注意義務を怠って「基本的な安全性を損なう瑕疵」を生じさせた場合には、建築主だけでなく利用者などに対しても不法行為による賠償責任を負うと判断した。賠償の対象にならないのは、瑕疵の存在を知りながらこれを前提として建物を買い受けていた者だけという判断を示した。

建物の「基本的な安全性を損なう瑕疵」については、基礎や躯体の瑕疵のように違法性が大きいものだけではないと解釈した。例えばバルコニーの手すりのぐらつきも、利用者の生命を危険にさらすので該当すると判断した。

判決文に記された建物の主な瑕疵は以下の通り。
■以下の個所のひび割れ
・A棟のバルコニー、A棟1階駐車場の梁と壁、A棟居室内の床スラブと戸境壁、A棟の外壁、B棟の居室内の床と壁、B棟の外壁
■以下の個所の鉄筋の露出
・A棟屋上の塔屋のひさし、B棟2階事務室の床スラブ
■A棟居室の床スラブのたわみ
■鉄筋コンクリートのひび割れによる鉄筋の耐力低下
■B棟床スラブ(天井スラブ)の構造上の瑕疵
■B棟の配管用のスリーブ(さや管)が梁を貫通していることによる耐力低下
本判決は中古マンション居住者にとっても朗報である。一方、建築、特にマンション供給に関係する業者にとっては、最近話題の建築基準法の改正以上にケアしなければならない内容を秘めている。

「【訴訟】欠陥マンションめぐる最高裁判決、購入者に対する設計・施工者の賠償責任を認定」ケンプラッツ2007/07/09
村田真「欠陥マンション訴訟を根本から変える!? 画期的な最高裁判決」マンション管理新時代2007/07/11

信義則

権利の行使および義務の履行は信義に従い誠実にこれをなすことを要す(民法第1条第2項)。 「金融商品の販売契約など、契約の内容が複雑な取引では、契約締結の前に、その契約について知識・情報を有する側から相手方に対して正確で十分な情報を提供したり、説明ないし助言をする信義則上の義務が生ずる」(後藤巻則「付随義務」法学セミナー558号45頁、2001年)。

「物件の評価を大きく低下させる原因事実があれば、取引上の信義として言及すべきである。これを隠して評価を偽って取引をしたのであれば、騙しによる過大な代金の騙取と言えるから、詐欺罪に問えることもあり得る」(石原豊昭『「詐欺」悪の手口と撃退マニュアル』自由国民社、2004年、180頁)。

「一方的な依存関係が強い場合には、業者が誠実に業務を遂行した旨のより詳細な説明義務が付加される」「顧客のプロ・アマ度合いを踏まえて対処することが実務上必要である」(三木まり「投資顧問業者の注意義務について(2)」財団法人日本証券経済研究所大阪研究所・証研レポート1608号、2002年、13頁)。

裁判例

「和牛界においては、子牛登記や本原登録等の各種登記・登録において、当該牛の父母、祖父母等を明らかにするなど、血統が極めて重要視されていることに照らすと、親子関係が否定される可能性が相当程度あると思われる糸光の精液については、その真偽が明らかになるまで販売を停止するのが相当といえるが、諸般の事情から引き続き精液を販売する途を選択する場合は、販売者には、精液の購入者に対してはもちろんのこと、精液を使用して産出された子牛を買い受けようとする第三者に対しても、第七糸桜と糸光との親子関係が否定される可能性がある旨を適当な方法で告知するなどして、精液あるいは糸光の産子等の購入者に不測の損害を蒙らせないようにすべき信義則上の義務がある」(宇都宮地判H12年11月15日判時1741-118)。

「不動産投資は、本来、不動産市況の変化等による危険を伴うものであり、不動産投資で利益を上げようとする投資家は、それに伴う危険も自らの責任で負担すべきであるが(自己責任の原則)、他方で、本件投資商品が、パートナーシップへの投資という一般投資家にとっては馴染みの薄いものであること、投資対象の物件が米国の不動産であること、為替リスクがあることなどに鑑みれば、被告は、顧客が本件投資商品の適合性を有していると認められる場合であっても、その勧誘に際し、顧客の学歴、職業、投資経験等を考慮した上、@本件投資商品の仕組み、A本件物件の現況、B本件投資商品の各種の危険性について説明する義務を負っていた」(大阪地判H11年3月24日判時1737-59オリックス事件)。

消費者契約法

消費者契約法(2000年成立、2001年4月施行)は消費者と事業者の契約で消費者の利益を守るための法律である。消費者契約法による訴訟、判決が相次いでいる(青山三千子・上原章「消費者契約法」イミダス2006、集英社、661頁)。国民生活センターで収集した消費者契約法に関連した訴訟のうち判決があったものは、平成17年8月31日現在で71件となっている(独立行政法人国民生活センター「消費者契約法に関連する消費生活相談件数と裁判の概況〜法施行後4年〜」2005年10月6日)。

「住宅の環境や品質に関する説明、 あるいは瑕疵担保責任などに関する約款などについて、 不動産取引にも消費者契約法の適用場面は多くある」(野々山宏「欠陥住宅と消費者契約法」欠陥住宅全国ネット機関紙「ふぉあ・すまいる」第4号、2000年10月15日)。

契約取消し

「消費者契約法は、次のような場合にも契約を取り消せるとしています。・・・・・・業者が家を売る時、現在の日当たりが良いことだけを告げ、将来、隣にマンションが建つ計画があり、日当たりが悪くなってしまうことを黙っているなど、消費者の利益になる事実だけを告げたために、消費者が不利益な事実がないと信じた場合」(本坊憲緯子「消費者契約法こんな場合は無かったことに」聖教新聞2006年10月12日)。

【大分簡裁平成16年2月19日判決】自宅の床下に拡散送風機等を設置する契約をしたが、消費者契約法第4条1項1号、第4条4項、第4条3項1号により取消を主張した。また、クレジット会社に対して、取消により支払停止の抗弁により、債務不存在の確認を求めた。判決は消費者からの退去要求があったことを認め、消費者契約法第4条3項1号による取消を認めた。また、クレジット会社に対しては、債務がないことを認めた。

【大阪高裁平成16年4月22日消費者法ニュースNo.60】消費者が購入した宝石の代金を立替払いしたクレジット会社が、代金を請求した。判決は消費者は一般的な小売価格が12万円程度である宝石を41万4000円程度である旨告げられ誤認をして購入したのであり、消費者契約法第4条1項1号により取消を認めた。それにより、クレジット会社に対する抗弁を認めた。

【大阪簡裁平成16年10月7日】リース会社が、電話機のリース契約に基づき、代金の支払いを請求した事案。消費者は、光ファイバーを引くには電話機を交換する必要があると虚偽の説明を受けて本件リース契約を締結したことから、消費者契約法第4条1項1号による取消を主張し、これを認めた。

【東京簡裁平成16年11月15日】消費者は、仕事をすれば月2万円は確実に稼げると勧誘され、また、販売業者は業務委託先の業者の報酬支払遅延を知りながら、告知せず、Aシステムを購入したため、消費者契約法第4条1項2号、第4条2項により取消し、購入代金の返還を求めた。判決は、月2万円は確実に稼げるとの発言を受けたという消費者の供述には、信憑性があり、断定的判断の提供をした場合に当たるとして、消費者契約法第4条1項2号による取消を認めた。

【東京簡裁平成16年11月29日】学習教材の立替払い契約に基づき、クレジット会社が消費者に対し、立替金残金の支払いを請求した事案。消費者は日本語を話したり理解ができない中国人である。販売担当者が契約内容をよく理解しえていないという実態を十分承知しながら、金額等重要事項の正確な説明をことさらし得なかったものであり、信義則に反する特段の事情があった。さらに、金額や役務内容について誤認させる言動があったことから、消費者契約法第4条1項、第5条により立替払契約の取消を認めた。以上の事由により、割賦販売法第30条の4により、抗弁が認められ、クレジット会社の請求を棄却した。

【名古屋地裁平成17日1月26日消費者法ニュースNo.63】商品先物取引業者が消費者に対し、帳尻差損金の支払を求めたところ、消費者は事業者の従業員が断定的な判断を提供して取引の勧誘をしたとして、消費者契約法第4条1項2号、1項1号、2項による取消を主張した。判決は東京灯油20枚の売り増しについて、断定的判断の提供があったとして、取消を認めた。

【東京地裁平成17年1月31日】MBAの資格取得のために、アメリカのビジネススクールの留学試験への合格を目的として、事業者が開講する授業を受講したが、留学に必要な全てが確実になるとか、個別指導をする旨の募集要項等において標榜されていた事項が実際には全く違っていたので、消費者契約法第4条1項等により取消を主張した。判決は、契約した一部のコースについては、留学に必要な全てが確実になるような内容のものではなく、個別指導方式とは程遠い内容のものであり、その部分の契約については取消を認めた。残りのコースは、特定商取引法の継続的役務提供にあたり、中途解約による返金が認められた。

条項の無効

【東京高裁平成16年5月26日判例タイムズ1153号】信用保証会社が、消費者が銀行からの借入金につき控訴人との間で締結した信用保証委託契約に基づき、銀行にその借入金及び利息を代位弁済した旨主張し、消費者に対して保証委託契約に基づき、求償金元金及び年18.25%の割合による約定損害金の支払いを求めた事案。消費者は、個人の資金融通のために保証委託契約を締結したものであることを主張し、これを認めて消費者契約法第9条2号により遅延損害金のうち年14.6%を超える部分については無効とした。

【東京簡裁平成16年7月5日】賃貸アパートの入居に際し、賃貸人に対し内部の修繕を求めたが、補修されなかったため契約を解除し、支払った預入金の返還を求めた。本件契約において、賃借人の都合により解約するときには、解約日の3か月前に書面により賃借人に解約届を提出しなければならず、これに従った解約をしない場合には、賃借人は、賃貸人に対し、賃料と共益費の合計の6か月分を補償する旨の合意がなされており、賃借人はこれに沿った解約をしていないので、返還義務はないと賃貸人は主張した。しかし、判決は当該条項は消費者契約法第10条により無効とし、手付金以外の代金の返還を命じた。

【千葉地裁平成16年7月28日】住宅設計施工業者が、消費者が建物工事請負契約を締結した後に、自己都合により本件契約を解除した旨主張し、契約条項に基づき違約金と、損害金の支払いを求めた。平均的損害の金額は、事業者が主張立証責任を負うとし、違約金の具体的算定根拠を明らかにしないため、事業者の平均的損害は、既に支出した費用相当の10万円を超えないものとして扱うほかなく、それを超える違約金条項は消費者契約法第9条1号により無効とした。

【東大阪簡裁平成17年1月27日消費者法ニュースNo.63】消費者が、資格講座教室との間で子ども英会話講師養成認定資格講座の受講契約を締結した後、解除したが、教室側が入学金等を返還しないので、消費者契約法第10条により返還を求めた。判決は「一度ご入金頂いた費用は、ご自身のご都合による返金はできません」という条項を消費者契約法第10条に反し無効とした。

敷金返還請求

【佐世保簡裁平成16年11月19日】賃貸契約終了後、敷引特約による未返還分の敷金の返還を求めた事案。契約締結時に十分な説明がないまま、敷金4か月分のうち一律に3.5か月分の敷引を行う旨の本件敷引特約は、消費者契約法第10条に反するとし、請求を認めた。

【大阪高裁平成16年12月17日消費者法ニュースNo.63(原審、京都地裁平成16年3月16日)】賃貸物件の解約時にクロスの汚れなどの自然損耗分の原状回復費用を賃借人に負担させる特約を理由に、敷金が返還されなかったため、消費者契約法第10条により返還を求めた。通常の使用による損耗(自然損耗)の修繕などにかかった費用を借り主の負担と定めた入居時の特約について、自然損耗による原状回復費用を賃借人に負担させることは、契約締結にあたっての情報力及び交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害すると判断し、消費者契約法第10条により無効とした。家主に全額返還するよう命じた。

【大阪高裁平成17年1月28日(原審、京都地裁平成16年6月11日)】通常の使用方法に伴う自然損耗を含め賃借人負担で原状回復する特約を理由に敷金を返還しないのは、消費者契約法第10条に反し無効とし、敷金の返還を求めた。判決は、本件特約は、民法の任意規定による賃借人の目的物返還義務を加重し、信義則に反する程度に消費者の利益を一方的に害するものと認め、消費者契約法第10条により無効とした。

【堺簡裁平成17年2月17日】賃貸借契約が終了し、明渡しが済んだ後、敷金の返還を求めた事案。敷引条項は、賃借人の損害の有無にかかわらず、敷金の約83%を控除して返還するのは、賃借人にとって不当に不利であり、また、賃借人が、敷引条項を削除して、若しくは、同条項の有無を選択して賃貸借契約を締結することは、事実上極めて困難であるから、賃借人が敷引条項を承知の上納得して契約したとは認められず、消費者契約法第10条により無効とした。

【大阪地裁平成17年4月20日】11か月居住した建物を退去した際、敷引特約と補修費用のため敷金が返金されなかったため、敷引特約は消費者契約法第10条により無効であることを主張し、返還を求めた。入居者の入居期間の長短にもかかわらず一律に保証金50万円から40万円を差し引くことは、本件敷引特約の趣旨が、通常損耗部分の修繕費に充てるためのものであるとしても、金額が大きく敷引特約の趣旨を逸脱しており、消費者契約法第10条に反するとした。しかし、京阪神地方における敷引の慣行は、敷金の額が相当で、賃料額が敷引を考慮して適正額に抑えられている限り、長年の慣行であることから必ずしも不当とは言えず、本件敷引特約条項の全部を無効とするのは、当事者の合理的意思に反するものと考えられるとし、敷引分40万円のうち30万円は無効であるとした。

大阪高裁平成18年5月23日判決は営業用賃貸物件で原状回復特約の成立を否定した。営業用物件にも最高裁平成17年12月16日第二小法廷判決の射程とした点が注目される。 京都の事例で、消費者契約法対象外の店舗・事務所でも原状回復特約を無効とした。

大阪地裁判決平成18年12月15日(山下郁夫裁判長)も敷引無効判決である。敷引特約が消費者契約法10条に違反し、全部無効であるとして、一部有効とした原審枚方簡裁判決を取り消し、敷引額30万円の返還を命じる判決を言い渡した。地裁レベルでは、神戸、大阪(2件)、大津、京都に続き6例目。特徴的なのは、本件敷引が高額で、保証金に占める割合も効率であって、特段の事情のない限り、信義則に反し消費者の利益を一方的に害するとして、立証責任を事実上、事業者に転換していると理解できる点である。

学納金返還請求

【京都地裁平成15年7月16日】京都女子大(京都市)などの元受験生ら五人が同大学を運営する京都女子学園など二つの学校法人に計約二百九十五万円の返還を求めた訴訟。大学入学を辞退したのに前納した入学金や授業料などを返さないのは、消費者契約法に違反すると主張した。判決は受けていない授業料などに加えて四月一日より前に入学辞退を明らかにした二人分の入学金返還を認め、二法人に計約二百二十万円の支払いを命じた。入学手続きに消費者契約法を適用。「前納金は返還しない」との入学要項の特約を無効とする初の判断を示した(「大学に前納金返還命令 「入学要項特約無効」 消費者契約法を適用 京都地裁判決」西日本新聞2003年7月17日)。

【大阪地裁平成15年11月7日】大学の入学試験に合格し、学納金を納付した後に入学を辞退し、民法または消費者契約法第9条1号により学納金の返還を求めた事案である。判決は授業料を返還しないとの特約は消費者契約法第9条1号に違反するとして返還を命じた。

【大阪地裁平成16年2月23日】【大阪地裁平成16年3月25日】【大阪高裁平成16年8月25日(原審、京都地裁平成15年7月16日)】【東京地裁平成16年9月8日】大学の入学試験に合格し、学納金を納付した後に入学を辞退し、民法または消費者契約法第9条1号、第10条により学納金の返還を求めた。判決は授業料を返還しないとの特約は消費者契約法第9条1号に違反するとして返還を命じた。

【東京地裁平成16年12月20日】大学の入学試験に合格し、学納金を納付した後に入学を辞退し、民法または消費者契約法第9条1号、第10条により学納金の返還を求めた事案。消費者契約法施行以前の契約については、返還義務を否定した。施行以降の契約については、入学金以外の学納金については、消費者契約法第9条1号により返金を認めた。

【東京高裁平成17年2月24日(原審、東京地裁平成16年3月22日)】大学の入学試験に合格し、学納金を納付した後に入学を辞退し、民法または消費者契約法第9条1号、第10条により学納金の返還を求めた事案。授業料を返還しないとの特約は消費者契約法第9条1号により無効として返還を命じた。しかし、入学金については入学し得る地位の対価として返還義務を否定した。

【東京高裁平成17年2月24日 (原審、東京地裁平成15年10月23日)】大学の入学試験に合格し、学納金を納付した後に入学を辞退し、民法または消費者契約法第9条1号、第10条により学納金の返還を求めた。消費者契約法施行以前の契約については、学納金の返還義務はないとした。施行後の契約については、学生の地位を取得した4月1日以降の入学辞退者については、学納金の返還義務はないとしたが、学生の地位取得前の辞退は、入学金以外の費用の不返還条項は消費者契約法第9条1号により無効とした。

【東京高裁平成17年3月10日 (原審、東京地裁平成16年3月30日)】大学の入学試験に合格し、学納金を納付した後に入学を辞退し、民法または消費者契約法第9条1号、第10条により学納金の返還を求めた。消費者契約法の施行以前の契約については、返還義務を否定した。施行以後の契約については入学金は入学資格を得た対価などとして返還義務を否定した。4月1日より前に辞退を申出たものについては、消費者契約法第9条1号により入学金以外の納入金の返還を命じた。また、4月1日以降に辞退を申出たものについては、返還義務を否定した。

【京都地裁平成17年3月25日】看護学校に合格し、入学金と運営協力金を支払ったのちに解除したため、消費者契約法第9条1号、第10条により返還を求めた。入学者に対して所定の教育的サービスを提供するために要する費用の一部は入学者に負担させるのが相当であるとして、入学金及び運営協力金という名称を付して入学者に納付を求めていることになっているとみるよりほかはなく、教育サービスを受けない者にこれを負担させるには、特段の事情が必要とした。また、解除により生じる空席で納入されるはずの費用を入手できないことは否定できないが、それは、本件学校に対する入学希望者の動向によって生じることであるから、本件特約によって入学者に負担させることは、前記特段の事情にあたらないとし、消費者契約法第10条により返還を認めた。

【東京高裁平成17年3月30日(原審、東京地裁平成16年4月30日)】大学の入学試験に合格し、学納金を納付した後に入学を辞退し、民法または消費者契約法第9条1号、第10条により学納金の返還を求めた。消費者契約法の施行以前の契約については、返還義務を否定した。施行以後の契約については入学金は入学し得る地位の対価として返還義務を否定した。4月1日より前に辞退を申出たものについては、消費者契約法第9条1号により入学金以外の納入金の返還を命じた。

【横浜地裁平成17年4月28日】大学の入学試験に合格し、学納金を納付した後に入学を辞退し、民法または消費者契約法第9条1号、第10条により学納金の返還を求めた。消費者契約法施行以前の契約については、学納金の返還義務はないとした。施行後の契約については、学生の地位を取得した4月2日の入学辞退者については、入学金の返還義務はないが、授業料等に対する反対給付の履行前であり、それ以外の損害はないとして消費者契約法第9条1号により返還を認めた。学生の地位取得前の辞退は、損害額は入学事務手続費用相当額であるとし、それ以外は消費者契約法第9条1号により無効とした。また、入学事務手続費用は民訴法第248条により10万円とした。推薦入試の場合には、高度の信頼関係が前提になっており、入学金の返還義務は否定したものの、それ以外については、損害はないとして、消費者契約法第9条1号により無効とした。

学納金返還訴訟、最高裁が授業料返還命令

入学辞退した大学に対し、受験生がいったん払い込んだ入学金や授業料など学納金の返還を求められるかが争われた16件の訴訟の上告審判決が最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)であった(2006年11月27日)。同小法廷は、消費者契約法施行後は、新年度開始前に入学辞退を申し出れば、大学には授業料などを全額受験生に返す義務があるとする新判断を示した。

解約時に不当に高額な違約金を取ることを禁じた消費者契約法の規定を武器に、全国約350人の元受験生を原告とする集団訴訟を提起した。原告は1997‐2004年に各大学の入試に合格し、入学金や授業料のほか施設整備費などを納付。その後、入学を辞退して返還を求めたが、各大学側は募集要項などに明記した「前納金は返還しない」との特約(不返還特約)を理由に拒んだため、提訴した。

16件の2審判決(東京、大阪両高裁)は判断が分かれ、同法施行前の原告や4月以降の辞退表明者が一部勝訴していたが、第2小法廷は統一判断に基づいて破棄するなどし、審理差し戻しの1件を除いて確定した。返還額が最も多いのは東邦大医学部訴訟の原告で830万円である。

第2小法廷は消費者契約法施行前の原告について「特約は有効」として請求を棄却する一方、施行後の原告には同法を適用した。「合格者が大学に入学することを約束した『在学契約』には、実害を超える賠償を禁じた消費者契約法が適用される」。「大学側は辞退者を見込んで合格者を決めている。3月中に辞退表明された場合は実害が発生しない。特約は無効」。「大学に損害が生じるのは入学年度が始まる4月1日以降」として、同法施行後の2002年度入試以降、3月31日までに入学を辞退した元受験生には原則として授業料を全額返還するよう大学側に命じた。

辞退表明は「口頭でも有効」とした。4月以降に入学を辞退していても、入学要項に「入学式を欠席した場合は入学できない」「4月2日に手続きしなければ入学許可を取り消す」などの記載があった同志社女子大や東洋大では返還を命令。職員から「入学式に出なければ入学辞退として扱う」と告げられていた武蔵工業大の元受験生にも、例外として返還を認めた。

判決後、弁護団長の松丸正弁護士はは「消費者契約法の威力をまざまざと見せつけた」と判決を評価した(「【関連】私大前納金訴訟 消費者契約法に沿い明暗」東京新聞2006年11月28日)。「受験生の弱みにつけ込んだ“ぼったくり”は許さない、という大原則が確認されたのは大きい」と訴訟の成果を強調した。

最高裁判決は、消費者保護の観点から、私立大が受験生から不当な授業料を取ることを禁じる初めての判断を示した。「浪人したくない」という一心で、数十万から数百万という高額の授業料を払い込まざるを得なかった受験生の弱い立場に一定の配慮を示したと言えるが、消費者契約法の施行(2001年4月)前後で明暗がはっきり分かれた(小林篤子「学納金返還訴訟 受験生の弱い立場に配慮」読売新聞2006年11月28日)。

消費者契約法施行前のケースでも大学側は元受験生の辞退後に別の受験生を追加合格させて定員を確保しており、二重取りの状態は変わらない。そのため、滝井繁男裁判官が反対意見で「辞退後に大学側が所定の入学者を得たにもかかわらず、授業料の返還を拒否するのは著しく信義に反する」と大学側を批判した。

「学納金返還訴訟、最高裁が条件付きで授業料返還命令」読売新聞2006年11月27日
「辞退者への学費返還命じる=消費者法施行後、新年度前の申告−最高裁」時事通信2006年11月27日
「契約法施行後は返還命令 大学入学辞退者の前納金返還訴訟」産経新聞2006年11月27日
「最高裁「授業料返還を」 大学前納金訴訟契約法後対象に」西日本新聞2006年11月28日

アコム、高利損害金で消費者契約法違反の疑い

消費者金融大手のアコムは、地銀などと提携している消費者ローンの滞納者に対し、消費者契約法で定められた金利(年14.6%)を上回る遅延損害金を請求していた。指摘されている提携ローンの遅延損害金の利率について、アコム側は「利息制限法で認められている上限(年29.2%)内に収まっているので、違法性はない」と主張する。

遅延損害金の利率について、東京高裁は平成16年5月に、「消費者契約法に基づく14.6%が上限になる」との判断を示している。内閣府も「原則として消費者契約法が優先される」との見方をしており、アコムの契約が同法に抵触する可能性が出た。

アコムは個人ローンの保証業務で14社と債務保証契約を結んでいる。保証料を受け取る代わりに、延滞があった場合にはアコムが返済を肩代わりし、資金を回収。債務保証残高は2006年6月末で1699億円に達する。

14社のうち、遅延損害金の利率が14.6%を超えていたのは以下の10社である。北海道(札幌市)、青森(青森市)、スルガ(静岡県沼津市)、十六(岐阜市)、北陸(富山市)、南都(奈良市)、広島(広島市)、西日本シティ(福岡市)、長崎(長崎市)の9銀行と、三菱東京UFJ銀行との合弁会社DCキャッシュワンである。

「アコムが消費者契約法違反の疑い 提携ローンで遅延損害金」産経新聞2006年9月24日
「アコム、ローン遅延金を高利で請求」日本経済新聞2006年9月25日
「アコムが高利遅延金」中日新聞2006年9月25日
「アコム 遅延損害金過大請求の疑い」FujiSankei Business i. 2006年9月25日

消費生活条例

さいたま市消費生活条例第14条「事業者は、消費者との間で行う商品又はサービスの取引に関し、次の各号のいずれかに該当する行為で規則で定めるものを行ってはならない。
(1)消費者に対し、販売の意図を隠し、商品若しくはサービスの内容、取引条件、取引の仕組み等に関し重要な情報を提供せず、若しくは誤認を招く情報を提供し、又は将来における不確実な事項につき断定的判断を提供して、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させる行為」

東京都消費生活条例

「消費者に対し、販売の意図を隠し、商品若しくはサービスの品質、安全性、内容、取引条件、取引の仕組み等に関する重要な情報であって、事業者が保有し、若しくは保有し得るものを提供せず、若しくは誤信を招く情報を提供し、又は将来における不確実な事項について断定的判断を提供して、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること」(東京都消費生活条例第25条第1号)。

「重要な情報」は「消費者が商品、サービスを購入する際に、そのことを知っていれば異なる判断や対応をしたと思われるような情報を指す」(東京都生活文化局「逐条解説東京都消費生活条例」2002年、35頁)。

東京都消費生活条例施行規則第6条第1号は「不適正な取引行為」として以下をあげる。「商品又はサ−ビスに関し、その品質、安全性、内容、取引条件、取引の仕組みその他の取引に関する重要な情報であって、事業者が保有し、又は保有し得るものを提供しないで、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること」。

悪質商法封じ、都が消費生活条例に刑事罰

新手の悪質商法への対策として、東京都は業者に業務停止命令を出せるよう消費生活条例を改正するとともに、罰金や懲役などの刑事罰を新設する方針を決めた。特定商取引法の抜け穴を突いた手口に網をかける狙い。都によると、業務停止の行政処分権限や刑事罰の規定を消費生活条例に盛り込むのは全国初。

都は2006年10月13日に出る消費生活対策審議会の答申を受け、まず12月の都議会に業務停止命令を出す権限を設けた改正条例案を提出。刑事罰の規定は、要件を明確化したうえで追加する方針である(「悪質商法封じ、都が消費生活条例に刑事罰」読売新聞2006年10月13日)。

既に「第19次東京都消費生活対策審議会部会 中間報告」において「改善命令及び業務停止命令等の行政処分や罰則を検討」「指導中心から処分重視への方針の転換」が述べられている(2006年7月27日)。

都や区市町村に寄せられた悪質商法に関する相談件数は2001年度に初めて10万件を突破、2004年度には約20万件に上った。高齢者ばかりを狙った手口も目立ち、同年度の平均被害額は100万円を超えている。


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